議会レポート

6月議会反対討論

日本共産党市議団を代表して、本議会に提案されております諸議案のうち、議案第3号、5号、6号、8号、10号、11号、13号ないし18号、21号ないし24号、および32号に反対し、討論を行います。

まず、議案第3号、2019年度「福岡市一般会計補正予算案」中、宿泊税導入への対応、および議案第6号「福岡市宿泊税条例案」についてです。

本議案は、昨年可決された「福岡市観光振興条例」の第11条にある「宿泊税」について具体的な中身を定めるものです。

審議の中で4つの点が問題として浮かび上がりました。

第一は、二重課税になっているという問題です。

一つの課税原因に対して同種の租税を2回以上課すことになる二重課税は、納税者に重い負担を強いたり、公平さを欠いたりするおそれがあり、回避・調整するのが基本です。ところが、今回の宿泊税はまさに市と県による二重課税であり、市は委員会審議の中でそのことを認めざるを得ませんでした。違法の可能性がきわめて高いものです。

同じ宿泊に対して、何度も税金を取り立ててよい理由などあるのでしょうか。

市は、宿泊者が行政サービスを受益していることに対して税金をかけているのだと主張しますが、それならば県の行政サービスは変わらないのに、本市や北九州市など市町村が手をあげれば税額が50円になったり100円になったり200円になったり、くるくる変わるのは一体なぜか、説明がつきません。まさに「税金の分捕り合戦」です。結局、明確な課税根拠はなく、市長と知事の「トップ会談」などという政治談合で税額を決めているため、こんなデタラメな税金になっているのではありませんか。

かつて王様や領主がほしいままに人民に税金をかけた反省から、近代社会では課税の根拠や明確さを厳格に求める原則が確立しました。ところが今回の宿泊税は、こうした原則に照らして、あまりにもずさんな制度設計になっていると言わねばなりません。

問題点の第二は、税負担の不公正さです。

条例案では、安いところに泊まっても税金を搾り取るために、料金が低いほど負担が重くなる逆進性を残したままになっています。先行して宿泊税をつくった東京では1万円未満、大阪では7000円未満の宿泊料金には課税しておりません。

しかも、答弁では、負担能力のない子どもからも無条件に徴収することが明らかとなりました。他都市では修学旅行に来た子どもたちからは税金を取り立てないように設計されていることと比べても、本市のやり方はあまりにも傲慢です。「国連世界観光機関」で決議された「世界観光倫理憲章」の第7条には「観光する権利」として「青少年、学生…による観光…は、奨励され、円滑化が図られるべきである」と定められています。本市のやり方はこの憲章の精神に真っ向から背くものです。

第三の問題点は、宿泊事業者、とりわけ小規模企業者に重い負担を課すことです。

審議の中で、市側は徴収や納付に関わる作業が増大することを認め、一定の支援を検討すると言わざるを得なくなりました。しかし、今回の補正予算にはそうした支援のメニューは一切示されておりません。事務作業の負担がどこまで膨れ上がり、それに対して有効な支援がなされるのかどうか、まったくわからないまま、「とにかく条例を通してくれ」では道理がありません。

とりわけ、競争にさらされている零細な業者ほど税金を転嫁できず、身銭を切らざるを得ない実態も、質疑の中で明らかになりました。水面下で広がる違法民泊には有効な手立てが打たれないままであり、今回の課税によって、まじめに税金を払う良心的な零細業者はますます苦しい立場に追い込まれます。こうした中で課税を強行することは、小規模企業者への配慮を定めた本市の中小企業振興条例第14条を無視したものであり、許されません。
第四の問題点は、宿泊税で集めたお金が「観光振興」を名目にして、MICE施設やクルーズ船受入施設などのムダなハコモノ建設に注ぎ込まれるという点です。

髙島市政は誕生当初から「稼げる都市」を掲げその「一丁目一番地」として、安倍政権仕込みの無謀な観光客呼び込み政策を進めてきました。その結果、市内の大企業の内部留保は1.4倍になったのに対して、市民の家計の可処分所得や一人当たりの雇用者報酬は低下しています。さらに、市の御用機関・「福岡アジア都市研究所」の調査でさえ、2014年から18年までの間に福岡市の「都市の成長」は他の国際都市と比べ「最も高い伸び」なのに、「生活の質」は年々「スコアが下落」していると嘆くありさまです。

集めた税金を、ゆがんだ「観光振興」に投入しても、市民には何も恩恵はなく、観光地が耐えられる以上の観光客が押し寄せる状態、いわゆる「オーバー・ツーリズム」と呼ばれる状況を生み出し、地元への負担を押し付けるだけで、観光政策の果実は大企業のみが味わう結果となっています。

以上4つの点から、わが党はこの条例案を認めることはできません。

もともと宿泊税は、議員提案で制定した観光振興条例が発端となっており、わが党は反対しましたが、議会の多くの会派がその責任を負っております。今見てきた問題点に加え、市として小規模企業者や宿泊客に対して意見を聴取する機会も設けておらず、このまま採決されれば後々禍根を残すものとなります。この際、いったん条例案を否決し、議会のイニシアチブで、市議会会議規則第88条にもとづいて、賛成・反対の利害関係者や有識者を呼ぶ公聴会を開いて十分な審議をやり直すことを議員諸氏に呼びかけるものであります。

次に、議案第8号「福岡市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例の一部を改正する条例案」をはじめとして、今年10月に予定されている消費税の10%への増税を手数料や乗車料金などに転嫁する諸議案についてです。

今回の増税は、実質賃金や家計消費の低下、政府の景気悪化の判断、世界経済のリスクの高まりの中で実施されようとしており、強行すれば暮らしも経済もどん底に突き落とす無謀極まるものです。自民党の萩生田光一幹事長代行でさえ「増税の延期もありうる」と述べざるを得ないような状況なのに、本市が粛々と増税を前提とした市民負担の押し付けを準備することは許されません。

議案第32号「福岡市介護保険条例の一部を改正する条例の専決処分」についても、同様です。

これは今年度から第1号被保険者の介護保険料の一部を軽減するものですが、その財源に消費税の増税を当てています。

今回軽減の対象となる第1段階から第3段階までの被保険者の介護保険料は、制度発足から比べると1.5倍から3倍にまで引き上げられております。それに加え、今回の消費税増税で年間2万円から3万円の負担増になります。

ところが軽減措置の方は、と言いますと、いちばん軽減幅の大きい第2段階でも年9000円程度、第1段階は約5400円、第3段階にいたっては1824円と雀の涙にしかなりません。「結局、軽減措置を受ける階層でも生活困難が広がるのではないか」というわが党の追及に対し、保健福祉局長はまともに反論ができませんでした。

わが党はこのような議案に賛成することはできません。

そもそも消費税増税などしなくても財源はあります。

もうけに対する法人税の負担率は、中小企業が18%なのに大企業は様々な軽減措置によって10%しか負担していません。また、所得が1億円を超えると、所得税の負担率が逆に下がってしまうように、富裕層は株で大もうけしており、そこへの課税税率は欧米に比べてはるかに低くなっています。

私ども日本共産党は、大企業優遇税制を是正し、中小企業並みの負担を求めることで4兆円、富裕層優遇税制を是正することで3.1兆円、日米地位協定上 負担する必要のない米軍への「思いやり予算」を廃止するなどして0.4兆円、合計7.5兆円の財源を提案しています。

この7.5兆円を財源にすれば、介護保険料の軽減はもちろん、年金の底上げなど「くらしを支える社会保障」が構築できるとともに、最低賃金の時給1000円への引上げなど「8時間働けばふつうに暮らせる社会」、大学の学費半減など「お金の心配なく、学び、子育てができる社会」が実現できます。

今求められているのは、消費税増税ではなく、こうした家計の負担と不安を軽減する家計応援と同時に、格差と貧困を是正する政策です。それこそが、日本経済の持続的成長を可能にし、99%の国民が希望を感じられる道です。

こうした政治への転換を求め、わが党の反対討論を終わります。

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