予算案・関連議案についての反対討論
2020年03月25日
日本共産党市議団を代表して、本議会に上程されております諸議案のうち、議案第25号ないし28号、32号、34号、35号、37号、39号ないし43号、45号、47号、48号、50号、51号、53号、55号、56号、59号、63号ないし66号、70号、71号、73号ないし75号について反対し、討論を行います。わが党の意見につきましては、代表質疑および補足質疑、分科会審査ならびに総会における質疑で述べていますので、ここではその基本点について述べます。
消費税増税による景気の悪化に加えて、新型コロナウイルスの感染拡大によって重大な社会・経済危機が進行しつつあります。国連のグテレス事務総長も「おそらく記録的規模となる世界的な景気後退はほぼ確実だ」と指摘しています。
このような中で、集団感染の拡大防止と国民生活の防衛のために必要な手立てを取ることが国の政治に求められます。
第一に、新型コロナウイルスの影響から国民生活を守ることです。中小企業をはじめとする企業倒産とリストラ・失業の連鎖を起こさないことを経済政策の大きな目標に据えるとともに、フリーランスをはじめ雇用保険の対象にならずに働いている人への所得補償制度を緊急につくるよう働きかけるべきです。
第二に、内需・家計・中小企業支援に力を集中することです。何と言っても消費税を5%に減税することは消費を下支えし、国民の所得を増やし、低所得者と中間層への力強い支援策となり、この経済危機に立ち向かう強い姿勢を政府が示すことになります。
しかし、安倍政権は消費税減税に消極的な姿勢を見せており、それ以外の施策についてもあまりに不十分です。
国が必要な手立てを取らない中で、「住民の福祉の増進を図る」ことを基本とする自治体こそ、感染の拡大防止と市民生活の防衛のために、緊急かつ大規模な対策を講じるべきですが、髙島市長が提案している2020年度予算案は、新型コロナウイルス感染のパンデミックが起きる以前に編成されたものであり、それに指一本触れないという態度は、許されるものではありません。
市は「予算の流用や予備費で対応する」と繰り返しましたが、審議の中でもわが党以外の議員からも批判の声が上がり、予算の流用は款項を超えてはできないこと、予備費は3億円しかないことなどが明らかになっており、さらに新型コロナウイルスの影響で学校が臨時休業になり、パンデミックが起きて以降、市長は追加修正の検討さえしていないことも判明しました。
未曾有の経済危機に対して、市長が組んだ当初予算案は、市民の暮らしと地元中小業者への応援は全く貧弱なままであるばかりか、逆にそれらを痛めつける中身にさえなっております。
福祉の分野では、国民健康保険については21億円もの剰余金を保険料引下げに充てることなく全額基金に積み立てる一方で、3万2000筆を超える署名を無視して、1人当たりの保険料を2000円、介護分を含めると4300円余も引き上げようとしております。介護保険料は値上げされたままの水準で維持し、生活保護については国の切下げを前提にして、わが党が求めた、保護世帯に対する夏季・年末見舞金の復活、市独自の下水道料金減免を拒否しました。福祉の分野で働く人たちの処遇も劣悪な状態に置かれたままであります。
保健・衛生分野についていえば、新型コロナウイルスの感染対策のための予算項目はほとんど含まれておりません。「感染症対策」として計上されている事業費は通常の予防接種などの予算が大半で、他の感染症対策の中にあわててくっつけたように「新型コロナウイルス」の名前が入っている「健康危機管理対策」事業はわずか100万円しかありません。パンデミックが起きているのに、まじめに感染拡大防止に取り組もうとしているのかと市民の不信を引き起こしかねない予算規模と言わねばなりません。
国の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は3月19日の「現状分析・提言」において、今後「爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながりかねない」リスクがあると警告して、それを防ぐ戦略の第一の柱に、クラスター対策、すなわち患者集団の早期発見・早期対応の抜本的強化を掲げました。ところが「保健所における労務負担が過重になっており、クラスター対策に人員を割けない」と同会議は指摘しており、「保健所が大規模なクラスター対策に専念できる人員と予算の投入」を政府と自治体に提言しています。しかし、新年度予算案ではこの専門家会議の提言に見合う保健所の増強は行われません。
子ども・教育の分野では、生活保護に連動して就学援助基準を切り下げるとともに、わが党が要求した給付制奨学金の創設、学校給食費や保育園の副食費の無償化、中学卒業までの医療費の完全無料化などにも背を向けています。
地域経済支援の分野では、あまりにも少ない中小企業への振興予算に加え、投じた額の10倍から20倍の経済効果がある住宅リフォームへの助成制度、市の発注した仕事や工事で働く人の公正な賃金を確保する公契約条例、働く人の使い捨てを許さない「ブラック企業」根絶条例などを冷たく拒んでおります。
他にも、家賃の安い市営住宅は新規建設を行わない姿勢を頑なにとりつづけ、防災の強化と同時に地元企業への仕事づくりになる水道配水管の耐震化も58%と遅れたままになっています。
さらに、財政運営プランにもとづいて市民利用施設の使用料値上げにつながる「統一的基準」づくりを新年度進めようとしているのであります。補足質疑でわが党はこの問題を追及しましたが、「福岡100等の施策なども考慮」するという市側の説明は、まさに65歳という現在の高齢者減免の区分を見直すことを意味するものにほかなりません。同時に、安倍政権が進める「全世代型社会保障」すなわち、高齢者を年金から遠ざけ、労働にむりやり追い立てる動きと軌を一にするものであり、莫大な負担増につながるこのようなやり方を、わが党は断じて認めることはできません。
他方で、市長が安倍政権と一体になって進めてきた「外からの大量呼び込み」に頼る路線は、今回の事態で劇的に破綻したことが明らかになりましたが、市長は依然としてこれを見直すことなく続けようとしております。
ウォーターフロント再整備は、MICEやクルーズなど外からの呼び込みを前提とした再開発そのものです。今後、第2期展示場、立体駐車場、都市計画道路、新交通システム、さらに新たな埋立て、ホールやクルーズターミナル、高級ホテルとそれに続く車路などを、市民に総事業費も明らかにしないまま推進しようとしており、新年度は数十億円を費やそうとしています。
さらに市長は外から人を呼び込むために、ペイペイドーム9個分65haもの箱崎ふ頭地区の水面貯木場および海面処分場を埋め立て、博多湾全体の大改造のテコにしようとしています。人工島埋立ての平均平米単価10万6000円で計算すれば、埋立費用だけで700億円もかかります。
「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」も特区などを使った規制緩和によってビルを高層化し、人と企業を呼び込もうというものですが、地価の暴騰、住民の追い出し、渋滞・ラッシュ・災害時の混乱などといったインフラのパンクを引き起こして都心の一極集中と街壊しにつながりかねません。しかし新年度、市長は両事業あわせて約17億円を投じようとしております。
人工島事業もなかなか売れない土地を、原価割れで、しかも交付金までプレゼントして売りつけ、企業を呼び込もうとしていますが、たった数分の短縮にしかならない高速道路建設をはじめ新年度140億円以上をつぎ込もうとしています。
中小の旅館業者や旅行者に重い負担を強いる宿泊税について、ホテルの平均客室稼働率を約72%で市が見込んでいるのに対し、現状は2割から3割ほどしかなく、実施の前提が崩壊していることが審議でも明らかになりました。県内の8割の宿泊業者が導入延期を求めておりますが、市はそんな実情を全く無視して4月からの実施を強行しようとしております。
わが党は代表質疑で「外からの呼び込み頼みでは、外部の事情にたえず左右される上、短期で陳腐化するMICEなどの施設建設に巨額の投資をくり返さざるをえず、持続可能な発展は不可能です」と指摘しましたが、市長は全く聞く耳を持ちませんでした。
「外からの呼び込み」によって儲けようとすることは、利潤の最大化を目的とする民間企業の戦略としては自由です。しかし、そうした大企業の儲けづくりのために、貴重な資源をつぎ込むことが地方自治体の役割ではありません。
髙島市政誕生以来、市内の大企業は5000億円も内部留保を増やし、市内の民間法人企業の可処分所得は1.5倍に膨れ上がっていますが、他方で市民雇用者1人あたりの賃金・俸給や1世帯あたりの市民の家計の可処分所得は逆に下がっています。大企業だけが儲かって、市民は貧しくなっているのです。市内の半分が年収300万円未満の低所得世帯になっている中で、そういう人たちを含めてどうやったらお金や仕事が循環する仕組みをつくるかを考えることこそが、今市長が心を砕かないといけないことではありませんか。
だからこそ、わが党は内需、とりわけ家計と中小企業を応援する経済政策への転換をはかり、予算案の抜本的な組替えをするよう代表質疑や総会質疑で提案したのですが、市長は応じませんでした。
なお、この問題に関連してですが、わが党は市長に対する「新型コロナウイルス感染症対策の迅速かつ総合的な取組を求める決議案」を立案し、議員各位にお示ししました。今回の危機に対して予算案の中に具体的かつ十分な対応策を市長が示しておらず、市民の不安もまことに大きいからこそ、議会は市民を代表して市政をチェックし、市長に対して積極的な働きかけを行う必要があります。それこそが議会としての責務ではないでしょうか。実際、他の自治体では同趣旨の決議を全会一致であげており、私どももそれを参考に立案をおこなったものであります。ところが、本市では多くの会派が決議に消極的な姿勢をとり、拱手傍観(きょうしゅぼうかん)の態度を示したのであります。これは、議会人としての職責を果たしていないと市民から批判されても仕方がないものです。わが党は全会一致という議会の慣例を尊重し、決議案を取り下げましたが、新型コロナウイルスと経済危機の影響は長期にわたって続くものであり、市長はもとより、議会にも引き続き緊張感を持った取り組みが求められていることを指摘しておきます。
市長が提案している予算案や関連議案について、暮らしや経済の問題の他に、重要な問題について述べておきます。
教育行政については、あいかわらず35人以下学級を1学年も拡充せず、体育館へのエアコン設置も拒否しております。さらに、8時間労働制を崩し、過重労働を生み出す教員の「1年単位の変形労働時間制」導入が引き続き狙われております。また、市長の無制限な呼び込み政策によって市内各地で無秩序な開発が起き、そのために学校がパンクする事態が生じていますが、わが党が開発規制の手立てをとるように提案したにもかかわらず手をつけようとしておりません。
環境政策については、玄海原発の稼働には全くモノを言わない一方で、再生可能エネルギーの導入目標は、市内消費電力量の2倍をまかなう利用可能量が本市に存在しているにも関わらず、2030年に電力の8%でよいというものにとどまっています。これでは気候変動について2040年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするといくら言ってみても、具体的な道筋が全く見えません。実際、市民や若者の要望が強い「気候非常事態宣言」をすることすら、市長は拒んでいるのであります。
ジェンダー平等については、市内事業所の男女の賃金格差を調査することや、男女賃金格差の是正をはかる指標を市の「男女共同参画基本計画」や「働く女性の活躍推進計画」に盛り込むことを市長はやろうとしておりません。さらに、本市としてハラスメントが違法であることを明確にした「ハラスメント禁止条例」も制定する気がないことが審議の中で明らかとなりました。
非正規職員の主要な部分が会計年度任用職員に移行しますが、公民館主事、学校司書、留守家庭子ども会主任支援員、市立学校臨時教職員、学校生活支援員など専門性の高い職員について、国会決議が勧奨している正規化への検討を行うことなく、非正規のまま据え置いています。さらに、処遇についても期末手当をわずかに上げるだけで、本給を切り下げるものになっており、当事者からは「月3万7000円も下げられては生活設計ができない」という悲鳴が上がっております。
平和の施策についても、核兵器廃絶のためのヒバクシャ国際署名に市長みずから署名することを拒んでいます。若い世代に戦争の悲惨さ、被爆の実相を伝えていくための、常設の平和資料館を建設するようわが党が要求しても、市長は積極的な姿勢を見せませんでした。また、福岡空港の滑走路増設に伴う、米軍板付基地の施設移転費の一部を負担することは基地の固定化・増強につながるものですが、全く問題視することなく新年度も支出を続けることを表明しています。
財政について言いますと、市債現在高は減っているものの、依然として市民1人当たり全会計で138万円にもなっています。また、一般会計の当初予算案に占める人件費の割合は16.7%と、算定中の3市を除けば政令市の中で最低になっており、公的な責任を放棄し、非正規化や民間への丸投げを進ませた結果が反映しております。
このように市民の立場から見て問題の多い市長の当初予算案には、わが党は賛成できません。
このほか、市長が新年度から本市の若者の名簿を自衛隊に一括提供しようとしていることも重大です。安倍政権の「戦争する国」づくりによって海外で殺し・殺される関係に投げ込まれる自衛隊に、若い人たちが入らなくなっております。それを憲法改悪によって自衛隊を明記することと、自治体に無理やり募集のための名簿を出させることで乗り切ろうとするなど許されるものではありません。本人の同意なく個人情報を渡すことは、憲法で保障されたプライバシー権の侵害であり、個人情報保護審議会でも、市長が持ち出した「公益性」という言い訳は批判され、提供を望まない人は除外する措置をとるよう厳しい条件がつけられました。追い詰められた市は「提供を望まない人の名簿を渡しても個人の権利利益の侵害には当たらない」という驚くべき答弁を、総会質疑の中で繰り返しました。いわば、拒否をしている人の名簿を渡したとしても“なんの問題もない”などという立場であり、憲法によって立つべき市長としての資格がないと言わなければなりません。あまりにも市民の権利を踏みにじり、審議会をないがしろにする異常な姿勢ではありませんか。
また、市長が提案した議案のうち、議案第48号「福岡市特別職職員等の議員報酬、報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部を改正する条例案」について述べておきます。
本議案は、他市の特別職職員との「均衡等を考慮」するとして、選挙管理委員会や人事委員会など行政委員会の委員等の報酬の額を引き下げるものです。この条例は行政委員会の委員だけでなく、市議会議員の報酬も定めておりますが、わが党はその引下げを訴えてまいりました。今回行政委員のみを対象とし、議員の引下げに踏み込まないのは、市民感情に照らして納得が得られないものであると考えます。よって、わが党は本議案に賛成することはできません。
以上で、わが党の反対討論を終わります。